結 心静かに花嫁になる 結 心静かに花嫁になる

昨夜、親子三人の寿司カウンター。
両親とも以前より早く酔いがまわったのは、
特別な日の前だったからだろうか。
それとも体を気にしてのことだったのだろうか。

もし、今ささいな変化があったとしても
気づきようもなくて、
家を出るということが、ずしりと身にこたえた。

都会に憧れ、高校卒業と同時に家を出た。
前日のことを覚えていないほど、嬉々として。
就職してからは
「何かあってもすぐには帰れないから」と
誇らし気に言ったこともあった。

家族で過ごすことが
ずいぶん前から特別になっていたことに、
結婚を考えはじめてから、やっと気がついた。

母がいて、父がいる。
ふたりが何十年もかけて築いてきた
かけがえのない場所の中にいたのに。

冗談まじりに「まだまだ元気でいてよ」という私に、
「まだまだ大丈夫」と父が胸を張り母がうなずいた。

「うん」と返しつつ、
長く連れ添った夫婦の機微に触れ、
自分もそんな信頼関係をつくりたいと思っていたら、
間がだいぶ開いて「大丈夫かなぁ」と漏れてしまった。

「大丈夫よ」
力強くもう一度言う母とうなずく父。

都会で生きた。でも、
一生に一度の挙式をおこなう場所は、
どこか生まれ育った家とおなじ空気がただよっていた。


昨日、伝えられた「ありがとう」を胸に、
今日、新しい一日を迎えます。
ふたりの子どもに生まれたこと、
私、しあわせです。