季節のお便り

ほんのりと明るくなった障子を開けると
アンティークの硝子窓の向こうにもみじの葉影

野鳥の声に誘われて散歩にでると
夜明け前の透明な空にはまだ三日月が残っている

灯明のような蛍のあかりが川面を舞う夏の夜
あたり一面が真っ赤に染まる紅葉の錦
冬の箕面の凜とした寒さ

滝までの小径を歩きながら
そんなことを訥々とした口調で話してくれた
庭師の素朴な笑顔を思い出した

そういえばはじめて門をくぐったとき
すこしとまどう私に丁寧に声をかけてくれた
仲居さんもいた

そして藝というものの深みを感じさせてくれた
昨夜の鮨職人のあの手さばき

たった数人の来客のために
こんな風に心を尽くす人たちのいることが
この小さな宿を魅力あるものにしているのだと
あらためて思う

せせらぎの音を聞きながら
赤い欄干のかかる古寺を過ぎて
箕面という地名の由来にもなったという大滝まで

新緑の中をゆっくりと歩き山荘にもどると
朝露に濡れた庭石の片隅にふと目をひく石礫があって
思わずそれを手にとった

その変哲もない小石を
仄暗い部屋の窓辺に置いてぼんやりと眺めている

記憶というのは残すものじゃなく
拾い集めるものかもしれない

そんな風にこの森の隠れ家にも出会い
いまそこで思いがけなくひとりのときを堪能している

ゆっくりと流れる豊かな時間
寛ぎという贅沢

記憶というのは残すものじゃなく
拾い集めるものかもしれない

そんな風にこの森の隠れ家にも出会い
いまそこで思いがけなくひとりのときを堪能している

ゆっくりと流れる豊かな時間
寛ぎという贅沢

素のままの自分にもどれるところ
人にはそんな場所が必要だ

朝ごはんはまだかな